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明けましておめでたうございます。

いきなり唐突短編です。

頭に浮かんだ話をざくっと書きました。

真剣で私に恋しなさい!の百代と一子の短編SSです。


↓短編:「新年、新しい日に」
「付き合いきれないから私は寝るぞ、ジジイ」

元旦の日の夜。
門下生のみんなが集まって騒いでいる広間の外に麺しているふすまを開けて、ジジイに言う。
出ていこうとする私の背後に、声がかかった。

「うむ。おやすみじゃ百代。明日は早いが、寝坊せんようにな」

分かってる、という返事を返しながら、麩をぱたんとしめた。





「う~、さむいなあ」

誰もいない廊下の上、自分の口から出る白い息を見ながら私はつぶやく。

今年はここ5年でも一番の冷え込みらしい。なるほど、庭に積もっている雪の量が、去年よりも多い。
去年は夜、暗い中でも庭に緑色が見えていた。今年はほとんど白色だ。

厚着をしているといっても、寒いのは寒い。
修行中も寒かった。そう私がつぶやくと、ジジイやルー師範代は『修行が足りない』や、『心頭滅却ネ!』とか言ってくる。

沖縄で生まれた釈迦堂さんは逆に『寒いものは寒いよなあ』と愚痴っていた。味方は釈迦堂さんだけだ。
その件でまたルー師範代と喧嘩になっていたが。

あの二人はよく喧嘩をする。性格とか、何もかもが正反対だから何かあるごとにぶつかりあい、口論のすえに拳で語りあっていた。
ジジイなどはあれでいいんじゃ、と言ってはいたが、実際のところどうなんだろう。

舎弟である大和に聞いてみたところ、『けんかするほど仲が良いってことじゃないかな』という答えを返された。
聞いた時は、なるほど、そういうものかもしれないと思ったものだ。

確かに、釈迦堂さんがまともに相手をする人は少ない。ルー師範代などは筆頭のような気もする。
あとはジジイほか数人だけだ。
むしろ、相手を気にするがゆえに、喧嘩も起きるのだろう。
私だって、そこらへんのどうでもいい奴ら相手に、わざわざ自分から喧嘩をふっかけようとは思わない。

「でも、やまとも変わったよなー…」

なんとなくつぶやく。
少し前の大和なら、小難しい理屈を並び立ててもっともらしいことを言っていたに違いない。それに対して私は、わからんといいながらげんこつをおみまいしていたに違いない。

でも、今は違った。京の件があってから、大和はなんか分厚い本を読まなくなった。話す言葉も、わかりやすくなった。
前の大和よりはなんか男らしくなったと思う。

もちろん素直にいうとつけあげるので、照れ隠しにヘッドロックをするだけなのだが。


今年の色々な出来事を思い出しながら、冷たい木の板ばりの上を歩いていく。

部屋を開けると、電気が消えていた。電気をつけるべく、私は暗い部屋の中を歩いていく。見えないことはないが、暗いのは嫌だ。

電気を点ける紐を前に、立つ。その時、遠く広間から宴会で騒ぐ大人達の声が聞こえてきた。

ふと、あることを思い出す。
両親のことだ。数年前から修行に出ていて、ある程度の成果がでるまでは、年末であってもこの川神院には帰ってこれない。

なので、私はいつも一人だった。
大人達の宴会の騒ぎを遠くに、一人暗い部屋で冷たい布団にくるまり眠るだけだった。
寂しくないといえば嘘になる。でも父さんも母さんも武に生きる者だ。私がどうこう言うべきことでもないだろうし、言うべきではないと思っている。

「さむい……」

でも、空気は冷たくて。部屋は暗くて。
頭を振り、電気をつけようと手をあげた。

その時だ。

「おねえさま……?」

入り口から、声がする。
振り返りながら、姿を確認するまえに私はその声の主の、名前を呼んだ。


「ワンコ…?」

見れば、私の部屋の入り口で、枕を持ちながら佇んでいる妹、一子の姿があった。







「電気けすぞー」

電気をつけた後、私はパジャマに着替えた。
布団を敷き、毛布をだし、枕を並べた後、電気のひもを引っ張る。

そして、布団の中へと潜り込んだ。

「わ、おねえさまからだがつめた~い」

「おまえはあったか~いな」

ワンコはさっきだが、宴会中に広間の端で眠ってしまったため、大人達に部屋に運ばれて行った。
そして、先に寝かされていたようだが、すぐに目が覚めてしまったらしい。
電気が消えた暗い部屋の中。小さい音だが、大人達が騒ぐ声が聞こえて何故か眠れなくなった。

そんな中、私が部屋に戻ってくる音が聞こえたので、私と一緒に寝ようと思ったらしい。

二つ枕を並べ、一つ同じ布団にくるまっているワンコの体を抱きしめる。

「ワンコはあったかいな~」

抱きしめると、ワンコも私を抱きしめ返してくる。
背中に回された手も暖かい。

私はなんともいえない気持ちになり、ぎゅっと抱きしめたままワンコの髪にほおづりをする。


その後、いろんなことを話した。
話す内容は決まっている、私たちの仲間のことだ。

大和のこと、京のこと、キャップのこと、ガクトのこと、モロのこと、色々なことを話した。

キャップの強さというか、強さというものを知ったあの事件は口止めされているためワンコには話せないが、本当に去年と今年は色々なことがあった。
話す内容は尽きず、胸の内から溢れてくる。

楽しかったこと、むかついたことなど種類は様々で、今も忘れることはない。

「……?」

話の途中、返事を返さなくなったワンコを見ると、寝息だけが聞こえた。
どうやら話の途中で寝てしまったようだ。

「………」

なんとなく不安になった私は、何もいわずにワンコをそっと抱きしめなおす。
規則的に体が上下に揺れている。

「……寝た、のか」

ふっと安堵のため息を零す。
そして私もワンコを抱きしめたまま、目を閉じる。

何も見えない、暗い。
でも、不思議と先程よりは不安を感じなかった。

(あたたかい……)

手のひらにあるぬくもり。上下する体を包んだまま、私はくすりと笑ってしまう。
今、改めて思える。ワンコを妹に出来て、ほんとうに良かったと。

(考える前に、言葉が出てたんだよな)

ワンコの保護者である人達が亡くなってしまったあと、大和に告げた言葉。
あれは、自分でも無意識に出た言葉だった。
考える余地もなく、私は、私がそうしたいと思っていたからなのかもしれない。

腕の中にある温もりを感じ、私は改めてそう思う。
あったかい。感じたことのない、ぬくもりだ。
意地っ張りで見栄っ張りの私には、大人に甘えるという選択を選べなかった。
両親にだってそうだ。そうした私が、ついぞ感じられなかった温かみが、ここにはある。


「おやすみ……」

温かみを腕に、私は微睡みに微笑まれたまま夢の中へと旅立つ。


明日も良い日だという予感を、全身に感じながら。


今年も良い年になると、心の中で思いながら。




「……今年もよろしくな、妹よ…」



















おまけ

一つの布団の中、安らかに眠っている百代と一子を優しげに見下ろしながら、年長組が笑みを零す。

「ふむ、どうやら寝たようじゃのう……モモも、こうしていると普通の子供のようじゃ」

「エエ」

「ぐっすり寝てるな」

鉄心を中心に、左右にルーと釈迦堂が立つ。二人は顔に青タンを張り付けていた。

「おぬしらも、これぐらい仲良かったらいいのにのう」

「気色悪いぞジジイ」

「コラ、釈迦堂。師範になんていう口を聞くネ!」

小声で言い合う二人を尻に、鉄心は一子をじっとみやる。

(この子がおれば、百代は大丈夫かもしれんのう)

武の神と言われた鉄心にしても、子育てに関しては未熟も未熟。
子供達のグループのリーダーと百代が起こした一件に関しては、鉄心にしても胆が冷えた。

二重の意味で、だ。

(しかし、この先百代が力の使い方を誤ることは無いかもしれんのう)

傍らにいる妹、一子に対する百代の溺愛ぶりは川神院の中でも噂になっている。
尋常ではない才能を持った鬼子とまでいわれていた百代の、意外ともいえる一面を見た院の人間が言っているのだろう。
確かに、鉄心にしてもそう思える。

(モモは、ただ知らなかっただけかもしれんのう)

武に生きる上で、両立がし難いものがいくつからある。加え、両親…鉄心にとっては息子と娘となる二人は、武者修行に出てしまった。
残された百代がずっと一人だったのは、祖父である鉄心にもわかっていた。

だが、百代はプライドが高い。大人の手を素直に取るような性格でもない。
反面、寂しさがあるというのもわかっていたのだ。
そんな中、一子の話は正直渡りに船であった。

百代の才能に気後れするような子でもいけない。
百代の才能を怖がるような子でもいけない。

その点、一子は申し分無かった。怖がらず、恐れず真正面から接してくれる同じ位置にいる存在をこそ、『ともだち』というものを、百代は望んでいたのだから。
女の身であればなお、それは難しい。

ながらく生きた鉄心であればこそ、思えるのだ。この時、あの場所で出会えたのは奇跡だと。
釈迦堂を相手にしても、気遣わせるほどの純真、かつ血尿を見た後でも尚立ち向かっていく強さを持つ一子。

仲間の事にしてもそうだ。普通は怖がってとおざかるもの。
加え、女の身であるモモのこt。
こんなご時世に得難い者をよく得られたものだと、鉄心は本心からの喜びの感情を覚えていた。

院内の人間、誰からも好かれる『次女』の将来と、仲間と友達、妹という存在を知った『百代』の将来。
考えるだけで、笑みがこぼれてしまう。


鉄心は笑みをこぼしながら、無言でにらみ合う弟子の襟元をつかみ、百代と一子が寝ている部屋を後にした。


二人、枕を並べながら寝ている、可愛い二人の娘の息を耳にしながら。
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